第18回 祖母田江(2/2話)
あくる日から用水を作る工事が始まりました。彼らのご飯は、おばあさんが一手に引き受けました。そんな中、おばあさんにはひとつ気になることがありました。自分が米を炊くのに、米を取りに行くのはいつもおじいさんなのです。蔵にはいつも鍵をかけ、 「あの米蔵には入ったらあかん。決して俵の中を見たらあかん」と言うのです。 おじいさんが留守だったある日のこと、おばあさんは我慢ができずそっと蔵に入りました。すると、中にとても美しい大きな米俵がありました。恐る恐る中を覗きますが、一粒の米も見あたりません。 「これは一体どうなっとるんじゃ」 そうおばあさんがつぶやくと、蝶が俵の底の方から出てきて、空のかなたへ飛んでいってしまいました。もう一度俵の中を覗きましたが、一粒の米もありません。 夕方おじいさんが町から帰ってきました。 「おじいさん、あれほど見たらあかんとゆうとった(※)米俵を、とうとう見てしもうた」 「な…、なんじゃと。あんなに見られんゆうとったがに」 おばあさんは泣いて謝りました。いつもは優しいおじいさんも、一生懸命働いている村の人たちのことを思うと腹が立ち、たいそう怒りました。そのためおばあさんは病気になり、しばらくして死んでしまいました。おじいさんはおばあさんを叱ったことをとても悔やみ、手篤く葬りました。しかし村人たちはおじいさんに腹を立て、口を利かなくなりました。それから間もなく、おじいさんは後を追うように死んでしまいました。この村の人たちは水口江のあたりで野良仕事をしながら、「おばあさんがここで絶えたそうだ」と言って、いつの頃からか、この辺りを「祖母田江」といって、人から人へと伝えられたということです。 ―おしまい―
※ゆうとった…言っていた
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「おばあさん、すまなかった…」
「おばあさん、すまなかった…」
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