第19回 雄神のごおけつ力士(2/4話)
「東のかいしょなし(※3)。誰か西を負かすもんおらんがか」という声があちこちからおこりました。今川も、東方が負けていくのを見て、とても悔しがりました。 そんな今川に、隣にいた仲間が、「おい、どうじゃ、兄貴、なんとかせんにゃ、これでは東方の負けや」、「お前なら勝てるやろ、やってみ、やってみ」、「しっかりやれ今川、負けると雄神力士の名が泣くぞ」、今川も悔しくて仕方なかったので、度胸を決めて土俵に上がりました。 行司は軍配(※4)を引きました。今川は慌てずに西方の相撲取りを組み伏せ、すぐに西土俵に放り出しました。二人目の相手も、そして三人目も、とうとう残り七人の西方の力士全員を打ち負かしてしまいました。 この今川の力の強いのを見た見物の人たちは、大喜びです。神社の鳥居が倒れるか、と思うほどの大きな声で喜び合いました。 こうして、越中は加賀に勝ちました。今川は仲間の人と手に持ちきれないほどの沢山の賞品をもらい、意気揚々と帰ってきました。雄神神社にお参りして、勝ち相撲の報告をしました。 今川の強いうわさは、越中、加賀、能登の三国に広まりました。しかし、今川も数年後には相撲取りを引退し、若者たちに相撲を教えることになりました。 ―つづく―
※3 かいしょなし…意気地のないこと ※4 軍配…相撲の行司が、両力士の立ち合いや勝負の判定を指示するのに使う、うちわ形の道具
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「雄神神社にお参りしよう」
「雄神神社にお参りしよう」
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