第20回 がごづか(1/2話)
昔、宗守のお宮さん(※1)にお城があったとおー。殿様と若い綺麗な奥方が住んでおられ、百姓の暮らしにもよく気を付けられ、みんなに慕われていたそうな。 ところが隣の国が勢力を伸ばそう何倍もの侍たちが攻めてきたが、その時殿様には三歳と生まれたばかりの赤子がおられたそうな。 殿様は奥方に、 「とても今度の戦いは勝ち目がない。お前はこの子どもを連れて、この家来の里へ落ち延びてくれ」 「私は殿様とご一緒に戦いとうございます。最後までお供させてください」 「それはならぬ。この後、誰がこの子どもを育てるのだ。何としてもこの子たちを育て、家名を再興してくれ。これがわしの最後の頼みだ。聞き分けてくれ。無事落ち延びてくれ」 奥方が赤子を、家来が三歳の子を背負って家来の実家へ向かったが、そこも既に敵方に囲まれており、近づくこともできない。 仕方なく宗守に戻ったが、城はもう火に包まれていたそうな。 「ああ殿様はもう!!」、奥方は声も出ない。 ずっと背負い続けて、乳も飲ませていない赤子が気になって降ろしてみると、赤子はぐったりしていて、乳を飲もうともしない。もう虫の息(※2)で、次第に弱っていくがどうすることもできない。思い余って穴を掘って赤子を埋め、西の方に逃げようとしたが、奥方はもう歩く体力も気力もなくなって、 「私はもう駄目です。殿様と赤子の元へ行きます。この子を頼みます」 −つづく−
※1宗守のお宮さん・・・宗守神明社 ※2虫の息・・・弱り果てて、今にも絶えそうな呼吸。また、その状態。
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「産まれたばかりだというのに…」
「産まれたばかりだというのに…」
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