第22回 人形山ものがたり(1/3話)
昔、平の田向村の山のふもとの合掌の家に、年とった母親と二人の娘が貧しいながら幸せに暮らしておりました。家から見える山の頂上には、泰澄法師が建てた白山権現堂があり、信仰深い三人は毎朝、戸口にかけたむしろを巻き上げて一日の無事を拝んでいました。 ところがある日のこと、年とった母親は無理をして働きすぎたためか、重い病にかかりました。心配して見舞いに来たとなりのおばあさんは、 「ほんまに大変なことになってしもうて。今まで、病ひとつしたことのない、おいねさんがこんなことになろうとは思うてもおらなんだ。おっかあは、きっと元気になるちゃ」 と娘たちをなぐさめました。 親思いの二人の娘は、いっそう熱心に白山権現様にお祈りしました。願いが通じたのか、ある夜のことです。白山権現様が寝ている娘たちの枕元に現れ、 「これこれ娘よ。この山の中に病に良く効く湯がある。その湯で母の体をあたためれば、病は必ず治る。あっちの谷川を探すがよい」 とのお告げがありました。 さっそく二人の娘は夜の明けるのを待って谷川をさかのぼり、夢のお告げの湯を探しに出かけました。やっとのことで湯を探し当てた二人の娘は大変喜び、かわるがわる母を背負って岩をつたい瀬をこえてその湯に通いました。
−つづく−
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はじまり、はじまり…。
はじまり、はじまり…。
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