第25回 牛岳の黄金(1/2話)
砺波市庄川町の南方にそびえる、高さ987メートルの牛嶽は、昔から「くわざき山」と言われていました。このくわざき山には埋められた黄金の話があります。 今からおよそ四百年前、富山城主・佐々成政は豊臣秀吉との戦いに負け、九州への国替えを命じられ、越中の国にたくさんの軍資金(※1)を隠しました。家来の一人を番人として残し、佐々家の再興を約束して立ち去りました。しかし黄金を使うことなく命果ててしまいました。 牛岳に一人残された番人は、わずかの畑を耕し、狩人をしながらさびしく住んでいました。成政が亡くなったことも知らず、二十数年主人を待ち続け、すっかり年老いて白髪のおじいさんになりました。おじいさんは山を数回下るうちに、ふもとの湯山(ゆやま)の村人とも顔見知りになりましたが、決して身の上を語りませんでした。ところがその後、立山の方からやってきたというひげむじゃな男が、牛嶽のふもとをうろつきはじめたのです。 ある日大滝の近くで、ひげ男はおじいさんをつかまえ、「黄金を埋めた所を話せ」と迫りました。おじいさんはよく考えた末、耳が聞こえないふりをしようと決心しました。ひげ男はそのままおじいさんの山小屋に居そうろうし、毎日鍬を持って出かけ、暗くなるとどこからともなく帰ってきました。困ったのはおじいさんです。「帰れ」とは言えないし、腕づくではかなわんし、心の中で「早く山を降りてくれ」と叫び、この悲しみを遠く熊本の成政に届けとばかり、毎日山頂にむかって、「ナムサン 牛嶽大権現」と手を合わせました。
−つづく−
※1軍資金・・・いくさに使うお金
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「黄金の埋めた所を話せ」
「黄金の埋めた所を話せ」
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