第28回 乳がよくでる門杉の皮
砺波市林(新屋敷)に伝わるお話です。
赤ちゃんを産んだばかりの女の人が、乳の出が悪いので困っていました。 あるとき、となりの村までやぎの乳をもらいに歩いていました。すると、旅のお坊さんがお宮さんの大きな杉の木の根っこにこしをおろして休んでいました。 お坊さんは、女の人とかるくあいさつをしたときに、赤ん坊の泣き声が弱々しいのに気がつきました。 「どうしたのかな」、わけをたずねました。そして、なにかいっしょうけんめいに念じ(※1)始めました。
しばらくして、「このお宮さんの大きな杉の皮をせんじて(※2)飲めば、乳の出がよくなりますよ」と言い残して、立ち去って行きました。 その女の人はわらをもつかむ思いで、さっそく、お坊さんの言うとおりにやってみました。 するとどうでしょう。たちまちたくさんのお乳が出るようになってきました。よその赤ちゃんにもわけてあげられるくらいになりました。弱かった赤ちゃんがすくすく育ちました。
やがて、この話を聞いた人が、おおぜいこの門杉(※3)にやってくるようになりましたとさ。 ―おしまい―
※1 念じる…お経を唱えて祈る ※2 せんじて…細かくして鍋に入れてよく煮出す ※3 門杉…鳥居のように立っている二本の大きな杉の木
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やぎの乳をもらいに歩いていました。
やぎの乳をもらいに歩いていました。
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