第29回 大杉と天狗さん(2/2話)

家の者たちは、「一体どこへ行かれるのだろう?」とこっそり後をつけました。 すると井波別院の後の大きな木の沢山あるところで急に霧が立ち込め、姿を見失ってしまいました。
あの不思議な太鼓の音は、その後も続き、村に大水や火事などの災害があったとき、必ず大杉の上から太鼓がなっていたそうです。また夜遊びの若衆があまり遅く帰ると、「パラ、 パラ、パラ」、「痛い!痛い!」、小石をまいて戒(いまし)められたとか…。また、隣り近所の家に夜、戸締りがしてないと、トントントントン雨戸を叩かれたそうです。「天狗さん太鼓」のドンドンという音は、昭和のはじめごろまで聞こえたそうです。
昭和十七年、戦争がはげしくなりました。杉の木は三本のうち二本までが切り倒されました。たたりがあっては大変だということで、高瀬神社の正面の扉になっているということです。その後今日までお盆、お正月、お祭りには、必ず天狗さんの神棚にお供え物をしてお参りをしておられます。
残された一本は、高さ二十メートル余り、周り四メートル五十、樹齢は四百年。雄々(おお)しい(※1)姿で天にそびえたっているということです。 ―おしまい―
※3雄々しい・・・男らしいさま。勇ましい。
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「パラ、 パラ、パラ」、「痛い!痛い!」
「パラ、 パラ、パラ」、「痛い!痛い!」
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