第33回 力もちの磯五郎

これは砺波市中野に伝わるお話です。
昔、加賀の殿様が、庄川の上流から流れてくる材木を運ぶために、人夫(※1)をくり出すことになりました。 ところが、あまりにも木が大きいため、なかなか運ぶことができませんでした。そこで殿様がきもいり(※2)に相談したところ、「磯五郎にやらせたらどうでしょう」と言われました。 磯五郎は十八才の若者で、ふつうだと四、五人でやっと運ぶような大きな材木を、一人で軽々と運ぶほどの力持ちでした。 磯五郎のおかげで、材木を全て運び終えることができました。
ある時、磯五郎が、三才の子どもを背負って、紋兵え島(もえべえじま)へ水の見まわりに出かけた時のことです。 しげみを歩いていると、いきなり怪しい者が彼の肩をつかみました。 磯五郎はその手をつかむと、前へ投げつけ、何事もなかったかのように、その場を後にしました。
翌朝、「紋兵え島で、おおかみが殺されている」と、村人たちが騒ぎました。磯五郎が投げたのは、おおかみだったのです。 力持ちだった磯五郎のお墓は、今も中野の地に残っています。 ―おしまい―
※1 人夫・・・作業員 ※2 きもいり・・・村の役人
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絵・『庄南むかしばなし』より
絵・『庄南むかしばなし』より
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