第3回 きつねの投げた赤いもち(後篇)
そこで赤べいは、こんな独り言をつぶやきました。「こんな夜中に峠を越えて、牛を売りに行く者がいるかなあ。峠の道は長いから、きっと途中で夜が明けると思うがなぁ。村の人に会ったら、何というのかなぁ。牛首峠は長い道だから、お天とう様(※2 )が昇る前に黒牛が赤牛になってしもたと、そんなだじゃれ(※3 )でも言うのかなぁ」と、ふざけた独り言をつぶやきながら、牛の顔へ赤いもちを投げつけました。 どろぼうは突然お地蔵様がしゃべり出したので、びっくりぎょうてん。逃げようと思って牛を見たら、黒い牛の顔が赤くなっていたのでまたびっくり。 「こりゃ大変」、どうぼうは峠の坂を転がりながら逃げていきました。 さて次の日、村人たちがお地蔵様の前を通りかかると、夕べいなくなった黒牛が、もぐもぐ草を食べて遊んでいるではありませんか。「おーい、黒牛がおったぞー」、村人たちが大勢集まってきました。 「よかったのー、よかったのー」。 みんなは、「盗まれた牛はお地蔵様が取り返して下さった」と思い、大変喜びました。こうして村の人たちは、前よりもっとお地蔵様を拝むようになりました。
−おしまい−
※2 お天とう様・・・太陽 ※3 だじゃれ・・・・下手なしゃれ
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紙芝居『きつねの投げた赤いもち』 作・ひまわりグループ
紙芝居『きつねの投げた赤いもち』 作・ひまわりグループ
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