第36回 杉の峠のおたすけじぞう(1/2話)
むかし、上梨から城端へ出るときには、「杉の峠」を越えて歩いていったものです。上梨の人は、この峠のことを「すぎんとげ」と呼んでいました。今では下に国道のトンネル(※1)が通り、峠道を歩く人はほとんどいません。峠には、昔から大きな杉の木と、その下にお地蔵様がありました。 道行く人は、必ずお地蔵様におまいりして、木陰で一息入れたものです。また大きな杉の木は、上り下りの目印にもなっていたので、雪の深い日などには、ようやくここまでたどりついて、やれやれとひと休みしたといいます。 「お地蔵様、ありがとうございます。無事にここまで参らせてもらいました」 お地蔵様は、やさしいお顔で、いつでも旅人をじっと見守っておられました。 ある年の冬。雪がことさら深い二月のことでした。菅沼村の北のおじいさんが、 「こりゃなんとひどい吹雪じゃ。城端から来る人が、なだれにあわんときゃ良いがにのぅ」 そうつぶやきながら、峠をくだってきました。 その時です。どこか遠くのほうから、「おーい、おーい」と呼ぶ声がします。 「いったい誰じゃろか?」 北のおじいさんは、声のするほうへ急ぎました。 ―つづく―
※1国道のトンネル・・・国道156号線 上梨トンネル
このお話は、南砺市立平図書館が制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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必ずお地蔵様におまいりして、木陰で一息入れたものです。
必ずお地蔵様におまいりして、木陰で一息入れたものです。
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