第39回 ヘクサンボ(2/2話)
「この手にいっぱい白い米あったらいいな。白いまま(※1)、腹いっぱい食いてえぞ」 と言うて、ポンポンポンと手を三回鳴らして、両手をいっぱいに広げてみた。するとあーら不思議、白いお米があふれんばかりに手のひらいっぱいに乗さっとった。腰の手(て)ご(※2)の中へそっとこぼさんように米を入れた。兵九郎は辺りを見回し、誰もおらんこと確かめて、せだいと家へ帰っていったと。 こうして人の通らんような夜とか朝早くに、兵九郎は毎日のように万世橋の上に来て、かわうそに願い事を言うたがいと。それから兵九郎の家は、だんだんと身の上がよくなって、とうとう村一番の大きな家も建ててしまった。家の裏には、蔵もいくつか建ち、年に一つずつ建て増していったそうな。だんだん身の上がよくなっていく兵九郎さんに、ある時村の人が聞いたがいと。 「兵九郎さんちゃ、何してそんなに儲けはったがけ?」 兵九郎はかわうそとの約束をすっかり忘れ、ついうっかり話してしもたがいと。 さあ、大変!!大きな御殿のような家や、いくつもの蔵にいっぱいあった宝物が、みーんなヘクサンボ(※3)になって、飛んでいってしまった。そしてとうとうむかしの貧しい兵九郎に戻ってしもたがいと。ヘクサンボがでかいとおるがは、兵九郎の宝物がでっかいとあったということかいな。 ―おしまい―
※1まま・・・ご飯 ※2手ご・・・手かご ※3ヘクサンボ・・・カメムシ
このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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みーんなヘクサンボになって、飛んでいってしまった。
みーんなヘクサンボになって、飛んでいってしまった。
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