第43回 大野の権兵衛(1/2話)
昔々、越中と加賀の境にある砺波山(※1)で、平維盛(たいらのこれもり)率いる大軍が木曽義仲(※2)の軍勢に大敗しました。やがて京に上った義仲は、義経軍に攻められて戦死してしまいました。 このとき義仲軍に従っていた井口軍には権兵衛という武士がいましたが、逃げる途中で足に怪我をして、歩くこともできなくなってしまったのです。 困った権兵衛は、脇に流れている赤い「そぶ(※3)」がある谷川の水を汲んで傷口を洗いました。すると、たちまち怪我が治りました。 「こんないい水が流れている所に住んだら、長生きできるかもしれない」 権兵衛は井口の大野に住むことにしました。
大野に住み着いて山を拓き、畑を耕していた権兵衛のところに、源頼朝に追われて奥州(おうしゅう)(※4)への旅の途中の義経たちが、「疲れたから一晩泊めてくれ」と言ってやってきました。 −つづく−
※1砺波山・・・現在の小矢部市石坂付近にある。標高263m。 ※2木曽義仲・・・源義仲。平安時代末期に活躍した武将。源頼朝や源義経とは従兄。 ※3そぶ・・・石灰が水に溶けてかたまったもの。色が赤褐色だったので、この付近を赤祖父というようになった。 ※4奥州・・・現在の岩手県付近。
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「長生きできるかもしれない」
「長生きできるかもしれない」
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