第44回 八乙女山の風穴とにわとり塚(2/2話)
こんなことを伝え聞いた悪い心を持った侍は、「そんなこと嘘だろう、嘘に決まっている。本当かどうか調べてやる」と言って、山に登って塚の前に張ってあったしめ縄を、自分の持っていた刀を抜いて、真っ二つに斬ったのじゃ。 そしたら急に風が出てきて、だんだん強くなって、とうとう塚が二つに吹き割れてしもたがやと。今も、塚は二つに割れたままになっとる。 それ以来、悪い心を持った者が登ると、南風が吹いてかなわん。 また今も、元日の明け方になると、金のにわとりが出てきて、東の方の井波に向かって、美しい声で鳴くんじゃと。 正月元日に早く起きて、神様や仏様にお参りし、心も体もすっきりさせて八乙女山の方に耳をかざすと、金のにわとりのすみきった、美しい声がかすかに聞こえるがやと。それを聞いた人は、その年中幸せになるがやと。 金のにわとりの鳴き声は降る雪と雪の隙間からとか、木の枝の先と先がぶつかる中からとか、雪の奥の中から聞こえるとも言われるし、お寺やお宮の屋根をこえて聞こえるとか、聞こうとさえすれば、誰でもどこでも聞けると、昔から言われておる。(金のにわとりは「コケコッコー」と鳴かんのが当たり前やぞいけ。時と所によって声が違おうが。気持ちがすっきりする美しい声。それが金のにわとりの声だという) ―おしまい―
このお話は、井波町母親クラブ連合会発行の『井波の昔ばなし』より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「そんなこと嘘に決まっている。本当かどうか調べてやる」
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