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となみ野 むかしがたり
 

私はとなみ野に伝わる民話や伝説を語り継いでいます。 砺波市・南砺市・小矢部市には様々なお話がありますが、 そんなお話の中から、とっておきのものをお話しします。 またみなさんの知っているお話がありましたら、ぜひお寄せくださいね。 それでは、はじまり、はじまり…。

掲載日:2020年12月1日
第49回 藤かけの渡し(1/2話)

 今からおよそ千二百年前、雄神川(※1)の西渕に、舟戸藤え門という豪族が住んでいました。信心深い藤え門は、川向かいの雄神神社に毎日お参りに行きたいと思っていました。しかし雄神川は流れが速くて水の量が多く、ゴーゴーと逆巻いて(※2)流れていたので、小さな舟ではたやすく渡ることができませんでした。
 ある春の、霧の深い日のことです。ふと向こう岸を見ると、美しい弁天様が現れ、藤え門を手招いているではありませんか。弁天様の不思議な魅力に惹かれた藤え門は、目の前に大きな川があることをすっかり忘れて駆け寄りました。
 その時です。向こう岸から美しい五色の霧に包まれた竜が、するすると川を渡ってきました。そして、今にも川に落ちそうな藤え門をすくい上げました。さらに、竜は逆巻く水波の上に身を伸ばして橋変わりになりました。藤え門は弁天様に導かれるままに、竜の背を渡って、向こう岸に無事に着きました。
「そなたは、毎日こちらを向いて熱心に手を合わせていますが、一体何を祈っているのですか」
「実は雄神神社へ毎日行ってお参りしたいのですが、水の勢いがあまりにも強くて、私の小さな舟ではこちらの岸までこぎつくことができません」
「そうでしたか。さあ、私の後についていらっしゃい」
と言うと弁天様はすうっと歩きはじめ、石段を登って雄神神社の境内に着きました。
−つづく−

※1雄神川・・・現在の庄川
※2さか巻く・・・川や潮の流れに逆らうように波が巻き上がる様子


「そなたは、一体何を祈っているのですか」


今日はどんなお話をしようかね…。
となみ野おばあちゃん

となみ野おばあちゃん、 となみ野、
私たちの故郷・となみ野には古くから多くの民話や伝説があり、先祖代々語り継がれてきました。
TSTとなみでは、そうした地域の良さを伝えるお話を紹介します。
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