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となみ野 むかしがたり
 

私はとなみ野に伝わる民話や伝説を語り継いでいます。 砺波市・南砺市・小矢部市には様々なお話がありますが、 そんなお話の中から、とっておきのものをお話しします。 またみなさんの知っているお話がありましたら、ぜひお寄せくださいね。 それでは、はじまり、はじまり…。

掲載日:2013年5月16日
第61回 やち川のかじか(2/2話)

 すると腹を切られたにもかかわらず、かじかは全て生き返り、間もなく見えなくなりました。長べえ親子は安心し、旅人の名を尋ねようと見上げましたが、いつの間にかいなくなってしまいました。長べえ親子は手分けして、村人に殺生をやめさせようと走り周りました。そして次の年の春まつりから、日を一日早めて二十七日にすることが、村の寄り合いで決まりました。
 それから一年経った春まつりの日の朝、長べえは裏のやち川渕を見て、驚きました。桶やかごに、もち米・豆・小豆、野菜、その上酒樽まで並べてあったからです。
「おっか、長すけ、出てみい。こんなでっかいと、どうしたこっちゃ」
「ごっつおの材料が、みんな揃っとるわ」
 その数は、ちょうど百ありました。親子は誰が、どうして、こんなにたくさん置いていったのか不思議でなりません。近所の人々にも尋ねてまわりました。
「そりゃ、助けたかじかの恩返しじゃ」
「いや、のうならしゃった親鸞様からの、お授かりもんかもしれんぞ」
「こりゃ、みんな、長べえさんのもんじゃ」
 こうして、思いもかけないたくさんのものをいただいた長べえは、長すけとともに手分けして村中の家々へ、一かごずつ配り、村人は大喜びしました。それは一年後の春まつりの朝にも、その次の年にも、たくさんのもち米や野菜などが並べてありました。
 こうして長べえの家はだんだん裕福になり、その上いっそう力を合わせて働いたので、一年に蔵が一つずつ増えていきました。やがて長すけは隣の庄村から、器量よしで働き者のお嫁さんをもらい、かわいい赤ちゃんも生まれました。長べえはその後、村人から薦められて村の長になり、三谷の里は平和で豊かな村になったということです。
 今でもやち川には、腹がくぼんで、あたかも切られたような、かじかが棲んでいるそうな。
―おしまい―


「こんなでっかいと、どうしたこっちゃ」


今日はどんなお話をしようかね…。
となみ野おばあちゃん

となみ野おばあちゃん、 となみ野、
私たちの故郷・となみ野には古くから多くの民話や伝説があり、先祖代々語り継がれてきました。
TSTとなみでは、そうした地域の良さを伝えるお話を紹介します。
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