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となみ野 むかしがたり
 

私はとなみ野に伝わる民話や伝説を語り継いでいます。 砺波市・南砺市・小矢部市には様々なお話がありますが、 そんなお話の中から、とっておきのものをお話しします。 またみなさんの知っているお話がありましたら、ぜひお寄せくださいね。 それでは、はじまり、はじまり…。

掲載日:2013年7月16日
第63回 まぼろしの木波町(2/2話)

 その二十日後、またもや、ばあさんが町中をかけまわりました。
「いっときに川が暴れて、町が流されるぞ。左の山へはよう逃げっしゃい!」
 ばあさんの予言が見事に当たったので、賢い人々はばあさんの言うことに従って山の麓へ逃げて行きました。しかし、ばあさんを変人扱いにし、川から帰らない男たちやのんびりした女たちがいました。ばあさんはもう一度町をかけまわりました。
「おらあ、もう知らんぞ!死んだいもんは残らっしゃい。さあ、庄の山へ逃げるんじゃ!」
 こうして村を一回りしたばあさんは、星占いの道具をもって壇の山へ向かいました。
 二十日間も堰き止められていた水は、川の東側と西側の両方から一気に暴れ出し、渦を巻いて流れ出しました。ちょうど、ばあさんが壇の山へたどりついた時、高さ十メートルほどの大水が押し寄せました。山の中腹にあった雄神神社はあっという間に流され、四百軒余りあった家も田んぼも跡形なく押し流されてしまいました。予言を信じて山へ逃げた人々は、命が助かったことに感謝し、喜び合いました。
 洪水が治まった後、雄神神社は東の山麓に再建され、一部残った社殿には弁財天が祀られました。これが弁財天社(元雄神神社)で、今も人々から「水難よけの神様」として崇め奉られています。
 ばあさんは二百才を過ぎてもまだ元気で、時々星占いをして、死ぬ日を待っていたそうな。
 ところで七百年栄えた木波町は一体どこにあったのか、今は誰もわかりません。知っているのは庄川と、どこかでまだ生きているかもしれないばあさん、あるいは弁財天社の弁天様くらいかも…。
 ―おしまい―


時々星占いをして、死ぬ日を待っていたそうな。


今日はどんなお話をしようかね…。
となみ野おばあちゃん

となみ野おばあちゃん、 となみ野、
私たちの故郷・となみ野には古くから多くの民話や伝説があり、先祖代々語り継がれてきました。
TSTとなみでは、そうした地域の良さを伝えるお話を紹介します。
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