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となみ野 むかしがたり
 

私はとなみ野に伝わる民話や伝説を語り継いでいます。 砺波市・南砺市・小矢部市には様々なお話がありますが、 そんなお話の中から、とっておきのものをお話しします。 またみなさんの知っているお話がありましたら、ぜひお寄せくださいね。 それでは、はじまり、はじまり…。

掲載日:2018年12月25日
第21回 身代わりになった鯉(4/4話)

 雪がとけて元気になったしん坊は、いつものようにこりもちを持って川へやってきました。ところが、あのりっぱなひげを生やした鯉が見あたりません。しん坊は心配でたまらず、赤岩の上流の方まで探しました。しかし、とうとうひげの鯉は姿を見せませんでした。
「しんすけ、もう遅いから家へ帰ろう」
「いつものひげの鯉おらんがいぜ。いつも、こりもちを持ってきたら、すぐ寄ってきたがに、どこさがしてもおらんもん」
 ふいにしん坊がいいました。
「あっ、そういうたらあん時の神主様、腹いたなおしてくれはった。あの神主様のひげと、あの鯉のひげ、おんなじや。そうや、おんなじやわ」
 お父さんも、お母さんもそれを聞いてびっくりしました。やさしいしんすけの心が、川の神様に通じ、神様がしんすけの身がわりになってくださったのです。そして、お父さんはしんすけの顔をなでながらいいました。
「しんすけ、何にでも優しくすることはいいことじゃ。いつまでも優しい思いやりの心を忘れられんぞ」
 しんすけのお腹がなおったように、今でも正月の七日には厄年(※)の人やその家族の人たちの一年間の無病息災を祈るのです。お宮さんの神前には、生きたままの鯉が供えられます。この後は鯉に御神酒を飲ませ、鯉のせなかに手をふれて、庄川へ放します。
 百六十年前に、小川原のしんすけが鯉に親切にしたことが、今までつづいているのです。
―おしまい―


「いつまでも優しい思いやりの心を忘れられんぞ」


今日はどんなお話をしようかね…。
となみ野おばあちゃん

となみ野おばあちゃん、 となみ野、
私たちの故郷・となみ野には古くから多くの民話や伝説があり、先祖代々語り継がれてきました。
TSTとなみでは、そうした地域の良さを伝えるお話を紹介します。
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