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となみ野 むかしがたり
 

私はとなみ野に伝わる民話や伝説を語り継いでいます。 砺波市・南砺市・小矢部市には様々なお話がありますが、 そんなお話の中から、とっておきのものをお話しします。 またみなさんの知っているお話がありましたら、ぜひお寄せくださいね。 それでは、はじまり、はじまり…。

掲載日:2019年3月16日
第24回 絵から抜け出した馬(2/2話)

 まもなく心を込めた三枚の立派な絵馬が描き上げられて、利常公に届けられました。孫の永徳の描いた三才馬の絵馬が二枚と、五才馬を描いた元信の絵馬が一枚でした。利常公は自らその絵に書を書き加えられ、早速安居寺に寄進されました。
 それから十五年ほど経った寛永の頃、この馬が絵から抜け出して、毎晩村中の田畑を荒らし回るという噂が立ちました。
「よんべ(※3)もやられたぞいね」
「ええー、またかいね。弱ったもんやねぇ」
「お寺に文句を言うわけにもいかんしのぉ」
「今年は米は滅茶苦茶やちゃ」
 次の晩も、その次の晩も、田畑の作物は荒らされ、村の人々は困り果てて頭を抱えていました。
 このことを聞かれた前田利常公は、守景(もりかげ)と言う絵師に絵馬のくつわ(※4)を綱に描かせました。くつわを付けられた馬は暴れなくなり、村は静かさを取り戻したのです。村人たちが大喜びだったのはいうまでもありません。今も絵馬の中の馬は、左右両方から太い綱で縛ってありますね。
 三枚の絵馬は、永い年月を得て真っ黒になっていますが、目をこらしてよく見ると、力強い親子の馬が躍動しているかのようです。

―おしまい―

※3よんべ・・・昨晩
※4くつわ・・・手綱をつけるために、馬の口にかませる金具のこと。


「よんべもやられたぞいね」


今日はどんなお話をしようかね…。
となみ野おばあちゃん

となみ野おばあちゃん、 となみ野、
私たちの故郷・となみ野には古くから多くの民話や伝説があり、先祖代々語り継がれてきました。
TSTとなみでは、そうした地域の良さを伝えるお話を紹介します。
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