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となみ野 むかしがたり
 

私はとなみ野に伝わる民話や伝説を語り継いでいます。 砺波市・南砺市・小矢部市には様々なお話がありますが、 そんなお話の中から、とっておきのものをお話しします。 またみなさんの知っているお話がありましたら、ぜひお寄せくださいね。 それでは、はじまり、はじまり…。

掲載日:2017年8月1日
第5回 福町の昔(前篇)

 小矢部川は、今よりずーっときれいで、でっかいと水が流れとった。福町には船着き場があって、川上は津沢や福光のまだ上(かみ)まで、川下(かわしも)はずーっと伏木の港まで舟で行き来しとった。その船着場付近を浜といって、荷物の積みおろしや北海道へ行く人を見送った。また、米俵を舟に積み出す人足(にんそく)が大勢働いており、夕方には高張提灯(たかはりちょうちん・※1)がついて賑やかしかった。
 小矢部川を挟んで三本の大きな大杉があった。川向かいのお諏訪(すわ)さんの大杉と天狗の大杉と浜の大杉やった。大杉には天狗さんが住んでござらっしゃって、大杉のてっぺんを往ったり来たりしていらっしゃると聞いて、怖くておれなんだ。
 小矢部川堤防沿いのお寺の近くに、浜地蔵様が祀られている。昔、旅の手代(※2)が店の大金を落としてしもうて入水(じゅすい・※3)した霊を弔(とむら)うために建てられた。この地蔵様は汗かき地蔵ともいわれ、国の一大事の起きる前には、「びっしょりと汗をかいていらっしゃる」と言われている。浜の地蔵祭りとして、年一回お祭りしている。
 明治三十二年、北陸線が開通し石動駅ができた頃には、だんだんと浜の仕事も少なくなり、町の中心も福町から石動駅中心へと移っていった。

−つづく−

※1高張提灯…長い竿(さお)の先につけ、高くさしあげるように作ったちょうちん。
※2手代…商店に勤めている一番えらい番頭と見習いの丁稚(でっち)との中間ぐらいの使用人。  
※3入水…川・池・海などへ自分から入って死ぬこと。


紙芝居『福町の昔』 作・ひまわりグループ


今日はどんなお話をしようかね…。
となみ野おばあちゃん

となみ野おばあちゃん、 となみ野、
私たちの故郷・となみ野には古くから多くの民話や伝説があり、先祖代々語り継がれてきました。
TSTとなみでは、そうした地域の良さを伝えるお話を紹介します。
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