第41回 やりのさきのみず(2/2)
そこで前田の殿様は、今まで成政が美味しく飲んでいた川の水を止めてしまいました。水が流れていないのを見た成政の家来たちは驚き、水が飲めず困ってしまいました。 「このままでは水がなくて死んでしまう。どこかに水がないか捜して来ます。」 と家来が言うと、他の者たちも城ヶ山に向かって水を捜しに駆け出して行きました。しかし一面は石ゴロゴロの所ばかりで、水の出る所は見あたりません。 そこでいよいよ成政と奥方も一緒に捜しに出かけることになりました。成政は草をかきわけ捜しましたが見あたりません。困り果てた成政は、何度も神様にお願いしました。 成政は舘村の山の中ほどを歩いている時、岩のとび出た所を見つけ、そこに生えている草や木だけが濡れているのに気づき、槍でひと突きしました。するとそこから沢山の水が「ゴーッ」と音をたてて吹きだしました。家来は、とびあがって喜びました。 それを見ていた成政の奥さんも離れた岩を槍で突くと、そこからもまた水が「ドドドドーッ」と吹き出して来たのです。 「殿、これはとても冷たくておいしい水でございます。殿も早速お飲みくださいませ」 家来は持っていた杓子に水をくみ、成政に差し出しました。 「ゴクゴク、うん、これは冷たくてうまい水じゃ。さあさあ、皆も早く飲むがよい」 奥方はさっそく腹をすかせた大勢の家来たちのために、美味しい御飯を作りました。 「御飯を一杯食べて、腹いっぱいだ。これで元気が出たぞ」 成政は家来に、村の人たちにも水の出る場所を教えるよう言いました。「殿、それはいい考えでございます。村人たちも大喜びするでしょう」 そして富山城へと帰っていきました。
それ以来、村人たちは、成政の突いた水を「男水」、その隣の成政の奥方が突いた水を「女水」といい、合わせてこの水を『槍の先の水』と呼ぶようになりました。 ―おしまい―
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沢山の水が吹きだし、家来たちはとびあがって喜びました。
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