2014/6/1 2014/7/1 となみ野ストーリー　第８回．小樽で花が開いた、ある商社の物語 ●小樽へ行った寿原弥平次
　「小樽」といえば故石原裕次郎がこよなく愛した港町として、よく知られていますね。小樽には「樽僑」といわれる商人が多数いましたが、福岡町出身の寿原弥平次もその1人です。
　明治14年(1881)年5月。寿原は、行商先の秋田で小樽の市街地が大火に見舞われたという噂を耳にします。「これはチャンスだ！」と確信した彼は早速小樽に出向き、店を開きます。これが「寿原」グループの始まりです。もともと寿原家はゴザ、ムシロ、セトモノを扱う福岡町で一番の老舗でした。そして彼は小樽でいくつか店を構えますが、店を構える先々で火事に見舞われるという災難も経験しています。
　こうして生まれた寿原グループは、合名会社イチマル寿原商店として、洋式の簿記帳や舶来品を小樽で販売し、今の小樽に象徴されるようなモダン化を進めました。

●寿原から独立した井波人
「北海道へ行こうという気概をもった青年はいないだろうか？」
　こんな思いを抱き、大正2年に生まれ故郷の井波町にやってきたのが、支配人だった須川外次郎でした。そこで卒業間近の高山隆行という一人の青年と出会います。「田舎にいても一生うだつがあがらないだろう。一旗あげてみたいな」。大きな夢を抱いていた高山は、家族の猛反対を押し切り、新天地へ胸に期待を膨らませて旅発ちました。
　厳しい丁稚奉公を経験し、2年後には行商営業を任されます。当時の北海道は人口の増加が顕著であり、主力製品のメリヤスは飛ぶように売れました。大正12年には富山市出身の芳枝夫人と結婚し、いよいよ独立する時期になりました。寿原では主人筋とは競合しないことが義務付けられていましたが、高山はモスリンの友禅染めを主力にキャラコ、テンジクなどの洋反物を扱う店を独立開業しています。戦後三ツ輪商事を設立し、小樽の経済界の重鎮として活躍しました。