北陸唯一のウイスキー蒸留所「三郎丸蒸留所」を持つ若鶴酒造（砺波市三郎丸）が、自社製ウイスキーの輸出を急速に伸ばしている。直近１年間の輸出額は３年前の３８倍になり、引き合いはさらに強まっているという。今後も販路を広げて海外ファンを増やし、アフターコロナの訪日旅行者の誘客にもつなげる戦略を描く。

　若鶴酒造が輸出に乗り出したのは２０１４年。当時は商社に任せており、売上高に占める輸出比率は２％にも満たなかった。

　転機になったのは１９年の鋳物蒸留器の導入。高岡銅器の釣り鐘の製造技法を応用した世界初の蒸留器は注目を集め、ウイスキー界で最も権威がある英国の専門誌の表紙を飾った。その蒸留器で生産したウイスキーは数々のコンテストで優秀な成績を残している。

　世界での知名度の高まりを受け、同社は輸出に関わる専任スタッフを配置。商社任せにせず、海外業者と直接やりとりする方式に切り替えた。各国の市場に応じた綿密な戦略を立てることで販売量は増え、輸出比率は１４％までアップした。

　近年、同社を含む国産メーカーのウイスキーは世界で高い評価を受けており、輸出額は右肩上がりが続く。アジアやアフリカ諸国の消費拡大も背景にあり、０８年に１４億円だった輸出額は２０年には２７１億円まで増加。日本の酒類の輸出額で長年トップを独走してきた日本酒の２４１億円を初めて抜いた。

　同社は今後も海外販路の開拓に力を入れ、輸出比率を２０％に引き上げたい考えだ。ウイスキー製造責任者の稲垣貴彦取締役は「四季の豊かな日本で育まれたウイスキーは欧米の伝統的な産地にはない魅力がある。品質に磨きをかけ、国内外のファンを増やしていきたい」と話している。