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世話する人、健康寿命長く 南砺市と富山大附属病院の高齢者調査
 
2018年3月19日 南砺市 地域・社会






 介護などで人の世話をしているお年寄りは健康寿命が延びる可能性が高いことが、南砺市や富山大附属病院による高齢者調査で分かった。2014年に元気だった人の3年後の健康状態を確認したところ、人の世話をしている人は、していない人に比べ、介護の必要がないレベルを維持している比率が高かった。医療関係者は、人の役に立つことが生きがいとなり、体調に好影響を与えたとみる。

 この調査は2014、17年の2回行い、南砺市内の65歳以上の人に生活や身体状況、自立の度合いなどを尋ねた。14年に介護の必要がなかった人のうち3年後の状況を追跡できた7405人について分析。世話をする相手がいるかいないかで、健康度合いに差が表れたか確かめた。

 その結果、世話をする相手がいる6340人のうち介護が必要でない状態を維持していたのは87%だったのに対し、世話をする相手がいない1065人では71%にとどまり、16ポイント差がついた。

 一方、介護が必要になった人の比率は世話をする相手がいるケースで9%、いないケースで20%と、2倍の開きが出た。死亡などがそれぞれ4%、9%だった。

 富山大附属病院総合診療部の黒岩祥太研究員の分析で、性別や年代、自立度などの影響を調整しても、世話をしている人の方が健康を維持しやすいという傾向に変わりはなかった。

 前南砺市民病院長の南眞司市政策参与はこの結果について「お世話を通じて体と頭を使えば、その人自身が元気になる」との見方を示す。

 地域包括ケアの国内第一人者、堀田聰子慶応大大学院教授が同市にコメントを寄せ、「人の世話をすることが生きがいにつながり、健康になるのではないかという仮説が、南砺市の高齢者への追跡調査に基づき検証されたことは、大きな意義がある」と評価。「支え合いのまちづくりをさらに進化させるエンジンになる」と、ケアシステム充実への波及効果を期待した。

 市は今後、市内各地区で説明会を開催。看病や世話などの活動が介護予防につながると訴え、住民組織を担い手とした簡易な介護サービス拡大につなげる考えだ。

 一方、他の調査項目からは、世話をする相手に手がかかるほど、憂鬱(ゆううつ)になりやすくなる傾向も浮かび上がった。南参与は「介護している人を孤立させないため、近隣住民による見守りや専門職のサポートが必要になる」と指摘している。

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