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せん定枝を官民で処理 屋敷林広がる砺波地方
 
2021年2月8日 すべて 地域・社会






 屋敷林の多い砺波地方で、散居景観を守ろうと官民でせん定した庭木の枝を処理する取り組みが広がっている。屋外で枝を燃やす「野焼き」をすると通報されることがあるため、砺波市は高齢者宅のせん定枝の戸別回収を開始。小矢部市はより多くの枝を受け入れるため、市民がごみ処理施設に持ち込む際の枝の長さの上限を決めた。自治振興会が枝をチップにする機械を導入するなど、市民の間でも対策が進んでいる。

 野焼きは廃棄物処理法で原則禁止されている。ただ、たき火など日常生活に伴う軽微な焼却は例外で、線引きが不明確だ。そのため砺波市や小矢部市では、野焼きをすると煙や臭いが迷惑だと苦情を受けたり、警察や消防に通報されたりするケースが後を絶たない。

 こうした事情から、砺波市では高齢者が自宅のせん定枝を処理しきれず、屋敷林自体を伐採してしまうケースもある。伝統的な景観を維持するため、市は昨年10月に戸別回収の実証実験を開始。散居景観保全協定を結んでいる地区で、65歳以上のみの世帯のせん定枝を、1回3千円で年2回まで回収することにした。

 利用者からは好評だが、これまでの回収は20件にとどまっており、市農地林務課の担当者は「周知に努めているが、さらにPRしていく」と話す。新年度は対象エリアを広げるなどして利用を増やしたい考えだ。

 小矢部市でも、野焼きをしづらいことが市民の負担になっている。自宅の敷地にマツやカエデなど約180本がある西永勉さん(73)=同市平田=は10年前、野焼きをして警察官から注意を受けた。以来、軽トラックで年十数回、市環境センターに枝を持ち込む。通報される心配はないが、「年々、体力的にきつくなり重労働だ」と嘆く。

 同センターに持ち込まれるせん定枝は、2015年度の243トンから19年度に459トンとほぼ倍増した。

 従来は長さ150センチまで受け入れていたが、かさばって処理に手間取るため、市は昨年5月、長さの上限を70センチに縮小した。市生活環境課は「枝を切断しないといけないので市民に手間を掛けてしまうが、枝の量が増えており、やむを得ない」と理解を求める。

 南砺市でも、住民が野焼きをして通報されることがあるという。市農政課は「今後の対応を考えないといけない」と話す。

 地域住民の間では、処理施設に運んだり、野焼きをしたりせずに枝を処理する動きも出ている。砺波市の高波自治振興会は昨年8月、市の補助を受け、約70万円で粉砕機を導入した。チップにして堆肥にするほか、家庭などの木の根元に敷いて雑草の伸びを抑える。

 ただ、周知が進まず同振興会の7自治会のうちこれまで粉砕機を使ったのは2自治会のみ。朝日利久会長(73)は「野焼きに代わる手段としてもっと利用を呼び掛けたい」と話している。

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