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チューリップ切り花出荷最多 本年度240万本の見通し
 
2022年1月20日 砺波市 地域・社会






 砺波市の2021年度のチューリップ切り花出荷本数が、前年度から40万本増え、過去最多の約240万本となる見通しとなった。最先端の栽培設備を導入した市内の事業者が生産量を押し上げ、他の事業者もインターネット販売に力を入れるなど販路拡大への取り組みが広がっている。市は「新型コロナ禍の巣ごもり需要で花の人気が高まったことも背景にある」とみている。

 県によると、チューリップの切り花は砺波、高岡両市や入善町など6市町で生産する。21年の県内生産量は343万9千本で、砺波市は211万1千本と6割を占める「一大産地」だ。全国では、19年は新潟県が1080万本でトップ。富山県は茨城県に次ぐ3位となっている。

 砺波市で切り花を生産しているのは、センティア(高波)、権正寺営農組合、フルール(三郎丸)、トピア坪内の4事業者。このうち、センティアは生産量が5年間で2・5倍に増え、市全体の生産数をけん引する。本場・オランダ産の珍しい品種を栽培し、東京や大阪などの市場向けに、21年度は49品種200万本の出荷を見込む。

 生産拡大を支えるのが、オランダ式の「ボックス栽培」と「移動式ベンチシステム」の導入だ。球根を縦40センチ、横60センチの箱に植え、温室内を動かせるベンチに載せて栽培する手法で、収穫期を迎えた花から順に搬出口に動かすことで作業効率が向上。栽培面積を増やし、品質低下を招く連作障害も起きにくくなった。

 20年10月には、国の事業を活用して温室を増築。ベンチと生育を調整する冷蔵庫も増やしてさらなる増産態勢を整えた。オランダで2年間研修した伊藤仁嗣社長(42)は、「最先端の栽培技術を取り入れながら生産性を高め、3年後には450万本を目指したい」と意気込む。

 市場向けだけでなく、個人向けの販売に力を入れる団体もある。市内の生産団体でつくる「砺波切花研究会」は、贈答用の花束を中心に、本年度は過去最多の約30品種6万4千本の出荷を予定する。近年はネット通販を強化し、20年度の売り上げは19年度比35%増の1100万円以上と大きく伸びた。市は「新しい生活様式の下で需要に結び付いた」(農業振興課)とみている。

 県内生産者によると、コロナ禍で外出自粛が続く中、全国的な「巣ごもり需要」で家に花を飾る人は増えているという。同会では花に癒やしを求める20〜40代の女性をメインに、SNS(会員制交流サイト)を活用して情報発信を強化する構えだ。清水穂会長(74)は「新鮮な花を届けられるのは全国一の球根産地だからこそ。切り花の魅力も広くアピールしたい」としている。

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