第59回 赤尾の道宗さん(2/2話)
西赤尾から井波まで胸まで潜るような深い雪に喘ぎながら、道宗は吹雪の尾根道を這うようにして歩きました。ところが、あるはずの道が雪崩で消えてしまっているではありませんか。途方に暮れた道宗は井波に行くことを諦め、懐から仏様を取り出し、「せめてここでお勤めさせていただこう」と念仏を唱え始めました。 すると深い雪に覆われた尾根に、突然舟を曳いた跡のような道が着きました。道宗は小踊りして足を早めました。 一方お寺では、なかなか到着しない道宗を、上人や人々が祈るような思いで待っていました。外へ様子を見に行った人たちも、雪で真っ白な八乙女山の尾根にじっと目を凝らしています。 やがて、白い尾根に黒い点が一つ! 「上人様!道宗さんが見えました」 「何?この吹雪の中をか?さあ、みんな。鐘と太鼓を叩いて迎えてやりなさい」 歓声があがり、上人の言葉にみんなの熱い思いは一気に爆発しました。 「ドーン、ガーン。ドーン、ガーン」 太鼓と梵鐘が鳴り響く中を、雪だるまのようになった道宗が、転がるように上人の前に着くと同時に朝のお勤めが始められました。 それから五百年、瑞泉寺では元日の朝のお勤めの前には、太鼓と鐘を鳴らすようになりました。道宗が歩いた道は「道宗の道」として今に伝えられています。 ―おしまい―
※このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「鐘と太鼓を叩いて迎えてやりなさい」
「鐘と太鼓を叩いて迎えてやりなさい」
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