第87回 三条の池の雨ごい(2/2話)
すると空が次第に曇り、辺りは真っ暗になりました。そして池の中から火柱が立つと、目も眩むばかりの龍神が黒雲に乗って空に舞い上がっていき、やがて山も崩れんばかりの大雨が降り出しました。 「雨じゃ。龍神様のおかげじゃ」 村人たちは叫びながら、踊り出しました。そして田畑は蘇りました。豊作の秋を迎えると、村人たちは感謝のお祭りを池の廻りで盛大に行いました。
さて、村に平太というのんき者がいました。村人たちが雨が降らなくて困っていた頃、平太は家の中でのんびり過ごしていました。 村人たちの感謝祭のあと、平太は一人で三条の池にやってきました。池の畔に座ってじっと水面を見つめ、やがて腰の鉈を磨ぎはじめました。次の日も平太は池の畔で鉈を磨ぎ、やがて手を合わせて水面に拝みました。その様子は次第に真剣なものとなり、龍神様を拝む姿にも見えました。 こんな日が続いて八日目のこと、平太は誤って鉈を池に落としてしまいました。すると池の中からゆらゆらと光の帯が現われ、やがてお女郎様の姿に変わりました。お女郎様は平太に近付くと、そのままやすやすと抱き抱え、水の中へ静かに姿を消していきました。 村では、平太の姿が見えなくなったと大騒ぎになりました。村人たちが三条の池にやってくると、池の畔の草の茂みに、平太が履いていた草履がきちんと置かれていました。 「平太は龍神様に召されて、水の世界へ行ったんじゃ。お女郎様の元へ行ったんじゃ」 村人たちは三条の池にしめ縄を張って拝み、その後お祭りを行って秋の実りを祈りました。 それから庄村では毎年豊作が続いたということです。 ―おしまい―
このお話は、庄川地域のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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平太を抱きかかえ、水の中へ姿を消しました。
平太を抱きかかえ、水の中へ姿を消しました。
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