第45回 半分になった観音さま
福野の安居寺に伝わるお話です。 昔、安居寺の観音様が、何者かに盗まれるという事件がありました。住職をはじめ、村人たちは、あちらこちらくまなく探したのですが見つかりません。大変なことになったものだと、一同は青くなっていました。 しばらくして、安居寺を訪れた旅人の口から、耳寄りのうわさが伝わってきました。それは金沢の卯辰山に最近、観音様が祀られ、たくさんの信者が連日お参りしているという話でした。 「うーむ。これはおかしな話だ、もしかして!」 一同は卯辰山へ行き、参拝する沢山の人々の中に加わり、祀られている観音様を拝観しました。すると、盗まれた観音様にあまりにもそっくりです。 一同は、さっそく寺社奉行(※)へ訴え出ました。しかしいくら調べても、どちらのものか確かなものがなく、腕を組むばかりです。 困った寺社奉行は、 「これでは解決のつけようがない。しかし、いずれかのものであるには違いないので、後日改めて調べることにする。その結果、双方とも奉行の判定に対し不服を申さぬという証文を、それぞれ持参するように申しつける」 呼び出しの当日、安居寺と卯辰山のお坊さんたちは、証文を持って奉行所に集まりました。 奉行は一同が揃ったのを確かめると、突然大工に命じて観音様をノコギリで真っ二つに切らせました。そして半分ずつを双方に与え、証文を提出させたのです。 それから安居寺と卯辰山の観音様は、同一体と言われるようになったそうです。 ―おしまい―
※寺社奉行・・・篠原出羽守(しのはら でわのかみ)とも伝わる。
このお話は、南砺市福野地域のひまわりグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正の上、掲載しました。
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「うーむ。これはおかしな話だ、もしかして!」
「うーむ。これはおかしな話だ、もしかして!」
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