第6回 天狗と与左衛門(前篇)
ある在所(※1)に墓腰(はかごし)の与左衛門という力自慢のこびくさ(※2)がおった。こびくさという者は、体のきっつい(※3)もんでなけんにゃ続かんだもんや。 なんちゅうても、でっかい(※4)松や、でっかいでっかい杉を切って家を建てる材木にするがいさかい、大変力がいったもんや。 がんど(※5)や、くさびなんかこも(※6)に巻くと、十貫(※7)以上もあった。それをかずいて(※8)持っていき、笹でふいた山小屋で何日も寝泊まりして仕事に励んだもんや。 でっかい木をでっかいがんどで「よいしょ、よいしょ」、「ジョッキリ、ジョッキリ」切った。一日中力仕事ばかりしとるもんじゃさかい、こびくさというもんはみんな強かった。 村でやっとった草相撲で懸賞旗をとるのは、こびくさどもやった。そんな中でも与左衛門は、だれと相撲とろうが喧嘩しようが負けた事なかった。 盤物(ばんもち)を持っちゃげるというのがあった。百貫ものでっかい石を与左衛門ときたら、「そら」と、腹の上に乗せ、肩の上にほりあげて「た、た、た。」と一町(※9)も走ったというこっちゃ。
−つづく−
※1 在所・・・・村の地域 ※2 こびくさ・・・木こり(山で木を切る仕事をする人) ※3 きっつい・・・強い ※4 でっかい・・・大きい ※5 がんど・・・・目のあらい大きなのこぎり ※6 こも・・・・・わらで荒く織った敷物 ※7 十貫・・・・・37.5kg ※8 かずく・・・・肩で荷負う ※9 一町・・・・・約109m
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紙芝居『天狗と与左衛門』 作・ひまわりグループ
紙芝居『天狗と与左衛門』 作・ひまわりグループ
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