第69回 大ねずみ退治(1/2話)
今からおよそ二百年あまり前、正得の五社につたわるお話です。 五社から隣村の道明までは、決して遠い道ではありません。しかし、その間に墓地があり、古い墓石が数多く建っていました。 そこに一匹の大ねずみが住んでいて、いつも小さな生き物を捕らえては喰っていました。はじめ村の人たちは、「これは犬か狼の仕業だろう」と言っていました。しかし飼猫ばかり被害に遭うので、「もしかして、化けねずみの仕業ではないか」と恐れられていました。
五社の勘兵衛という人の息子に、二十七才になる血気盛んな伊兵衛という男がいました。相撲も取り、肝っ玉の太い強者でした。その伊兵衛が、たまたま用事があって隣村の道明の親戚へ出掛けた帰り道のことでした。伊兵衛は墓地を通ることなんかは平気でした。 「何が出てきても恐いもんか。もし、化けねずみでも出て来たら、投げとばしてやる」と鼻歌を唄いながら墓地の真ん中を通り過ぎようとしました。その時、伊兵衛の懐には、親戚にもらった子猫が、殺気を感じたのか急に体を丸くすぼめました。辺りはシーンと静まり返っていました。 突然、「ガタガタ」と石の崩れる音がしたかと思ったら、怪物がとび鳥のように伊兵衛の膝あたりに飛びついてきました。 「さては、敵が現れたな」 −つづく−
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「何が出てきても怖いもんか」
「何が出てきても怖いもんか」
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