第15回 金塚の宮(2/2話)
「この木の根元だったな」、ザックリ、ザックリ。 おじいさんは掘っていきます。ザックリ、ザックリ。少し離れた木の陰には、後を追ってきたおばあさんがそっと立っています。 「おじいさんは何でも私に話してくれるのに、これは一体どうしたことだろう。何を掘ろうとしているのかしら」。しかしおじいさんはザックリ、ザックリ、一生懸命に土を掘り続けています。 「カチリ」、おじいさんの鍬を持つ手が止まりました。何かを鍬の先に感じたのです。六十センチほど掘ったところでした。ソロソロと鍬はなおも動き、とうとう大きな陶器が出てきました。九リットル(5升)も入るものです。 夢のお告げは本当のことだったのか、急いで蓋に手をかけたその時、おばあさんが木の陰から駆け寄ってきました。 「おじいさん、それは一体何ですか?」 その時です。目の前の水がめは、まばゆいばかりの鶏の姿に変わり、悲しそうにおじいさんを見つめていたかと思うと、大きくはばたき、東の空へと飛び去っていってしまいました。 後に残されたおじいさんとおばあさんは、水がめの中にあったであろう黄金が、手の届かない所へと去ってしまったことへの種々の思いが、頭の中をかけめぐったことでしょう。 しかし、その後も二人は仲睦まじく、正直で思いやりのある一生を送ったということです。 黄金の眠っていた東の宮は、それからは金塚の宮と呼ぶようになったのです。 ―おしまい―
注・・・元東の宮跡には、現在石碑のみが立っていて、碑には「金塚の宮跡」と刻まれている。明治41年には、苗島神明社に合祀された。伝説のケヤキの木は、苗島神明社の社殿の用材となっている。
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「あの時は本当にすまなかった…」
「あの時は本当にすまなかった…」
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