第91回 温泉のおこり(1/2話)
福光から金沢へ行く途中の山の中に湯谷(ゆだに)という村があります。その村では、田んぼや畑の仕事をしたり、山の木を切ったりして、元気に仲良く暮らしていました。 ところが少し経つと、どうしたことか病気の人がどんどん増えていきました。 「わしは手が痛くて畑ができない」 「私は、頭が痛くて起きられない」 そこへ泰澄(たいちょう)という偉いお坊さんが通られました。 「この村にはなんと病気の人がたくさんいるのだろう。なんとかしてみんなを助けてやらねば・・・」 お坊さんは地面の上に座って、「南無阿弥陀仏」と一生懸命に昼も夜もお祈りを続けました。 すると不思議なことに、お坊さんの座っておられる周りから「ボコ、ボコ、ピュー」と音を立てて、お湯が噴き出してきました。 「あっ、お湯じゃ。わしらの村に温泉が出たぞ、有難いことじゃ」 村人たちはみんなで大喜びしました。それからお坊さんは、村の人から不思議な力を持った木をもらい、何日も掛けて立派な一尺一寸の仏様を彫られたのです。 「仏様、どうか村人を守ってください」 お坊さんは、その仏様をお湯の出た所に置かれました。 「さあ、このお湯に入るがよい。仏様のお守りくださる有難いお湯じゃ。きっと病気も治るだろう」 お年寄りも、男も女も子どももみんなが、このお湯に入りに来ました。 「いい湯じゃのう。痛い所がすうっと治っていくようじゃ」 「温まるのう、疲れが取れたわい。有難い、有難い・・・」 こうしてこの温泉は、村の人たちでいっぱいになりました。 −つづく−
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「どうか村人を守ってください」
「どうか村人を守ってください」
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