第4回 かんざしわらし(前篇)
津沢に小矢部川の橋が架かっていなかった頃のお話です。 津沢や経田(きょうでん)など川東(かわひがし)の人が、蓑輪(みのわ)や浅地(あさじ)など川西(かわにし)の所へ行く時は「大原(だいばら)」まで行って、川の浅瀬を選んで歩いて渡っていました。 川西の経田村に政右衛門(まさえもん)という若者がいました。その頃はお祭りになると、たいていのお宮さんで相撲大会が行われ、優勝すると名前を書いた大関(※3)札が掲げられました。政右衛門は人並み外れた力持ちだったので、いつも自慢していました。 ある年の秋、政右衛門は蓑輪村の秋祭り相撲大会に出るのに「大原」に来ました。ふと見ると小さな子どもが一人、川原の石に腰掛けていました。 「何しているんだ」と言うと、小さな棒切れを持ち上げて「このかんざしを買ってくれ」と頼みました。「ははあん。これはムジナか、カワウソか」、力自慢で怖い物知らずの政右衛門は、「そんなものいらん」と言って、その棒切れを取り上げ川の中へ捨てました。すると辺りが急に明るくなりました。政右衛門は、そのまま川を渡りました。お宮さんに着いた政右衛門は、相撲大会で優勝して大きな鏡餅を貰って帰りました。
−つづく−
※1 かんざし・・女性の髪の毛にさす飾り ※2 わらし・・・こども ※3 大関・・・・現在は横綱が最高位だが、むかしは大関が最高位だった
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紙芝居『かんざしわらし』 作・ひまわりグループ
紙芝居『かんざしわらし』 作・ひまわりグループ
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