第31回 瓜裂しょうず(1/2話)
砺波市庄川町金屋の岩黒(いわぐろ)地内に瓜裂しょうずという清水があります。この清水は砺波地方ではめずらしい霊泉としてよく知られています。 雨の降らない暑い日照りが毎日続いても、今まで一度もかれたことがないといわれています。またこの清水は、飲むと夏は冷たくておいしく、冬は温かく、深い雪をかき分けて掘り起こした金屋ねぎを洗うのにとてもよいと、付近の人々から大変喜ばれています。 今からおよそ六百年ほども昔のことです。 岩黒の奥に杉谷というところがあって、その麓に粗末なかやぶきの小さな家が一軒ありました。その家へ京都の本願寺から綽如上人という、えらいお坊さまがおいでになって住まわれておりました。 ある日、上人は井波や金屋の村々へ、仏の尊い教えを広めようと、馬に乗ってお出かけになられました。草深い山道を下って、ちょうど山すその岩黒までおいでになったとき、馬を止めてしばらく休憩されることになりました。付近の村人は仕事の手を休め、尊い上人の教えを聞こうとして、まわりに大勢集まってきました。 その時、突然、馬が大きくいななきました(※)。そして馬の蹄が土の中に沈みはじめました。するとどうでしょう。村人の見守る前で、蹄の跡からきれいな清水がこんこんと湧き出てきたではありませんか。 −つづく−
※いななく・・・馬が声高く鳴くこと
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「水じゃ、水じゃ。水が出たぞ」
「水じゃ、水じゃ。水が出たぞ」
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