第70回 てんぐのこしかけ木(2/2話)
霧の深い朝、長ぞうは初ご飯を山の神に供え、梅干しを食べて山小屋を出発しました。長ぞうは仲間たちと、どんどん谷深く入って行きました。しばらく行くと、仲間の一人は根元の太い欅の木を見つけました。 「なんちゅうええ欅。切ろまいか」 早速仲間たちと斧を打ちこみましたが、進みません。数時間経った頃、長ぞうは父から聞かされた約束を思い出しました。 「上が丸く曲がっとる!天狗さんの木じゃ!お祓いせにゃ」 しかし仲間の一人が、「そんでもお神酒ないもん。お祓いもできんわい」と斧を振り上げたとたん、谷間の木がバサバサと大きな音を立ててざわめき、強い風がビューッと吹いて、なぎ倒されてしまいました。 「はよ、帰ってお祓いせにゃ。天狗さんがおいでたんじゃ」 やっとのことで起き上がったみんなは、すぐ山小屋へ引き返し、山の神にお神酒を供え、お祈りしました。そのおかげか、大きな事故なく帰ることができました。 無事正月を迎えた長ぞうは、一日の朝、小川原の八幡様へお参りしました。その時、境内の杉の大木の中に、天狗の腰かけ木を見つけました。長ぞうは、早速お神酒とぼた餅をお供えしました。 その頃村では、天狗さんが出たとの噂が広まりました。長ぞうは、「飛騨の奥山の天狗さんが時々出張してきて、村のお宮さんでいっぷくなさるがいな」と思いました。 ―おしまい―
※このお話は、砺波市庄川町のボランティアグループが制作した紙芝居より、一部加筆・修正のうえ、掲載しました。
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「天狗さんがいらはったのじゃなかろうか」
「天狗さんがいらはったのじゃなかろうか」
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