第21回 身代わりになった鯉(2/4話)
しかし、しん坊が覆いかぶさっているので、子どもたちは石を投げられません。そのうちにわんぱく頭の子どもはあきらめたのか、 「なんちゅうだらなしん坊や。仕方ないわ、その鯉お前にくれてやるわい」 といって、みんな帰ってしまいました。 しん坊は傷ついた鯉をなでながら、流れに放してやりました。水に放された鯉は、うれしそうにしっぽをひらひらさせながら、やがて深い水底に見えなくなってしまいました。 そんなことがあってから、夏も終わり、秋もすぎ、やがてお正月がやってきました。 ところがどうしたことか、正月の三日からしん坊は急におなかが痛くなったのです。だんだん痛くなるばかりで、薬を飲みましたが少しもよくなりません。その上、高い熱も出て、苦しくなるばかりです。 お父さんも、お母さんも心配でたまりません。お父さんはいいました。 「しん坊、正月になったからちゅうて、何でもでっかいと食べるさかいじゃ」 お母さんはそれを聞いて、 「父さん、お腹の痛いしん坊をいくらやめつけても(※)あかんわいね。それよりもう三日も痛いまんまや。神様にお参りして、早よなおるように願かけたらどうやろ」 こうしてお父さんとお母さんは、神棚の下に立って一生懸命お祈りしました。 ―つづく―
※やめつける・・・叱る
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「神様にお参りして、早よなおるように願かけたらどうやろ」
「神様にお参りして、早よなおるように願かけたらどうやろ」
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