第105回.月夜のかわうそ(1/2話)
これは砺波市の栴檀山地区に伝わるおはなしです。 ある晩のことです。五平とっつぁんが川ぶちの道をトコトコ 歩いていると、突然、怪しい塊がすごいスピードで目の前を横切ったかと思うと、川 の中へドボンと飛び込みました。 あまりに突然の出来事に、五平は目を見開いたまま、腰を抜かしてしまいました。 夜が明けるといつもの村の様子で、特に変わった感じはありませんでした。 しかし五平は、 「金の塊が、川へ向かって一目散に転がっていった」 と、夕べ恐ろしい目に遭ったことをみんなに話しました。 村人は次々に言いました。 「おらも長生きしとるが、そんなもん見たことないぞ」 「子どもらは夕方から外へ出たらあかんぞ」 村は大騒ぎとなり、ついに村長さんは常会を開くことにしました。 「さて皆の衆、五平が見たもんは何だかわからんが、大事件じゃ。誰か、勇気ある者が、夜の見張りをしたらいいと思うがのう」 すると身体の大きな善太が手を挙げて、こう言いました。 「俺がやってみる」 次の夜、善太は身支度を整えて山へ登っていきました。きらきら輝く星をいただいて、木の陰にかくれましたが何も起こらず、ただきれいな三日月が野山を照らすばかりでした。 それから何日か経って、満月のある夜のことです。辺りが急に昼のように明るくなりました。その時です。善太の目の前を、金色の塊が駆け抜けたのです。 「待て、待てーぇ」 −つづく−
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「五平が見たもんは何だかわからんが、大事件じゃ」
「五平が見たもんは何だかわからんが、大事件じゃ」
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