第61回 やち川のかじか(1/2話)
やち川は桑崎山(今の牛嶽)の東麓から流れ出し、栴檀山地区から三谷地内を流れ、庄川に流れ込んでいる川です。 今からおよそ七百年前のことです。三月二十八日は三谷村の春まつりの日で、魚はこの日だけしか食べることはできず、若者は朝からたくさんの魚を捕えようと張り切っていました。 この三谷村には、とても働き者の長べえ親子三人が暮らしていました。長べえの息子・長すけは、 「まっつりのごっつお、でっかいととってくるちゃ」と言って、裏のやち川へ飛んで行きました。一時間後、大きい木桶に底が見えないほど、たくさんのかじかを捕えてきました。 「長すけ、でっかいと捕らまいてきたな。でかしたぞ」 と長べえは包丁で順々に腸を切り取ろうとしました。 ちょうどその時、一人の旅人が通り掛かり、「今日は何の日か知ってござるか」と言いました。 「おらちゃの村の春まっつりじゃ」 旅人は、困った顔つきで言いました。 「今日は、わがごかいさん聖人、親鸞様がお亡くなりになったご命日じゃ。知らぬか」 長べえはとまどいましたが、少し腹を切ったままのかじかを、「なんまんだぶつ、なんまんだぶつ」と言いながら、川の中へ放してやりました。 −つづく−
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「でっかいと捕まいてきたな。でかしたぞ」
「でっかいと捕まいてきたな。でかしたぞ」
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