第7回 天狗のおはなし(前篇)
昔々、宮島の山に、とっても気の良い天狗が住んどった。 顔が真っ赤で鼻が高く目はギョロリ。まほうのうちわを持っとった。「このうちわで遊んでみるか。」 「鼻よ、高くなーあれ。」とうちわをあおいだら、あれあれあれ、みるみるうちに天まで伸びていった。「あいたたた。」 「やっぱり低いほうがよいな。」とうちわをあおぐと鼻は元通りになった。 「今度は子どもになって、村へいってみよう。」と思い、「子どもになあれ」とあおぐと、かわいい男の子になった。 夜になって、子どもになった天狗は「火の用心、火の用心」と太鼓をたたきながら歩きまわった。村人たちはその音を聞いて、火事にならないように気をつけた。 次の日、畑の方に行くと、のんき者の与太郎たちが畑の中へこっそり入り込み、すいかを食べとった。子どもに化けた天狗は「おら(※1)もまぜて。」と言って一緒になってうまそうにすいかを食べた。そして与太郎と天狗は、すっかり仲良しになった。 ある日、与太郎がのんきに歩いているのを見つけた天狗は、「おーい、与太郎。今日はおもしろい所へ連れていってやろか。」と、与太郎をさそった。「うん、連れてって。」と、一つ返事で答えるやいなや、脇に抱えて空をかけめぐって行った。
−つづく−
※1 おら・・・わたし(自分のこと)
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紙芝居『天狗のおはなし』 作・ひまわりグループ
紙芝居『天狗のおはなし』 作・ひまわりグループ
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