第60回 おおちからもちのおこどん(1/2話)
むかしむかし、才川の吉右衛門という百姓の家に、おこどんという、びっくりするくらい力持ちの男の子がいました。 ある年の秋、村で採れた大豆や小豆を、金沢へ売りに行くことになったおこどんは、大きな袋を十個も肩に乗せ、金沢まで二十キロの道を歩いて行きました。 金沢では、城の側で新しい石垣を積むため、大勢の人がわいわい騒ぎながら大きな石を運んでいました。大きな石を二十人位の人たちが担ごうとしますが、さっぱり上がらない様子を見たおこどんは「何ちゅう、かいしょうのない者どもだなあ」と思い、笑いました。親方は、振り向いて、「何がおかしいんじゃ」と腹を立てて言いました。 「こんなにたくさんの人がおって、これくらいの石を動かせんいうて、もたもたしとるから思わず笑うたがで、かんにんしてくだされ」 おこどんの答えに、親方は目をむいて怒り 「お前一人で動かせるもんなら、動かしてみせい」 と言いました。おこどんは、その大きな石を「うんとこしょ」と持ち上げて運びました。みんなはびっくりしたものの、自分たちができないことを簡単にやってのけたおこどんにますます腹を立て、 「わしどもにひどい恥かかせたな。いつかこの仇がえししてやるぞ」 と騒ぎました。おこどんは気にせずさっさと立ち去って、市場で大豆と小豆を売り、大急ぎで日暮れ近くに村まで戻ってきました。
−つづく−
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「何ちゅう、かいしょうのない者どもだなあ」
「何ちゅう、かいしょうのない者どもだなあ」
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