第68回 釜が淵嫁が淵(1/2話)
福光の南にある嫁兼に、打尾川という川が流れています。水は青く澄んでいて、大きな岩や小さな岩がたくさんあり、流れは蛇のように曲がりくねっています。また急な流れの所もあちこちにあり、岩に大きな穴を開けています。 むかしこの打尾川の近くに、一軒の家がありました。その家には、まご助とおよねが住んでいました。ある日、お坊さんを呼んで、良い話を聞く会を開くことになりました。 「今日は忙しいぞ、およね。話を聞いた後、ごちそうを用意してくれ。使うお椀を出してくるよ」 まご助は蔵の中から、大切にしまってあった木箱を出してきました。箱の中から、それはそれはきれいに磨かれたお椀を取り出して、 「このお椀はずっと昔のおじいさん、おばあさんが大事に使っておられた大切な宝のお椀だ。人が集まる時しか使わない大切なものだから、割ったり、失くしたりしないようよく注意してくれよ」 およねは、その大切なお椀をきれいな川の水で洗おうと、川の淵へ行きました。そしてきれいにしようと、お椀を一つ一つ丁寧に洗っていました。ところが洗ったお椀を籠の中に入れようとした時に手が滑って、大切なお椀を2〜3個、川の中に落としてしまったのです。慌てて手を伸ばして拾おうとしましたが川の流れが早く、あっという間に遠くまで流れていってしまいました。 「どうしよう。あのお椀がないとご馳走が出せなくなってしまう」 およねはどうすればよいかわからず、川の淵に座り込んでしまいました。気がつくと、川の中に主が現れたのです。 −つづく−
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大切なお椀を河の中に落としてしまったのです。
大切なお椀を河の中に落としてしまったのです。
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